「GHQ 焚書図書開封 6」 西尾幹二著
感想文
坦々塾会員 浅野正美
本年は満州事変勃発80年、大東亜戦争開戦70年という二つの大切な節目を向かえた年でもありました。ちょうどこのタイミングに合う形で西尾先生の焚書図書開封5・6巻が刊行されました。この二巻においてアメリカの野望と身勝手な使命感がくっきりとあぶり出されています。西尾先生はブログの中でこう断言されています。
「くどいことは言わない。この二冊を読まずして今後、戦争の歴史を語るなかれ。」まだこの二冊を読んでいない方は、是非続けて読んでください。そうすることでパールハーバーに至る歴史の必然が明確に理解できます。我々がいかに誤った歴史観を植え付けられ、作為にあふれた歴史空間を歩んできたかということが豊富な資料と当時の著作によって次々と暴かれていきます。
それにしても本当にすごいのは、西尾先生の驚異的な仕事量です。先頃全集の刊行が始まりそれだけでもご自身の生涯の仕事を振り返るというとてつもない作業を伴うにも関わらず、その間平行して単行本を立て続けに上梓され、さらに雑誌への執筆、講演、各種行事への参加と続きます。驚くべきことに来月には「天皇と原爆」というタイトルの単行本が新潮社から予定されています。実は西尾先生は二人いて仕事を分担しているのではないかという冗談もつぶやきたくなりますが、仮にそれが事実であったとして余人に真似のできる仕業ではありません。
さて、焚書図書開封も巻を重ねて6巻まで進みました。自由と民主主義の国アメリカが他国の書物を焚書するという矛盾には、怒りを通り越して失笑すら禁じ得ません。この国の特徴である、自分に都合のいいことには幼稚な正義感と原理原則を振りかざして他人にも強要しておきながら、都合の悪いことには知らん顔をするという独善性がよく解ります。第5巻はアメリカ太平洋侵略の内ハワイまでを、そして本6巻では、いよいよ満州、日本がその毒牙に狙われる時代を描きます。イギリスからの移民開拓団としてアメリカ東海岸の地に一歩を踏み出した彼らは、妄執ともいえる情熱をもって西へ西へと進みます。スペイン、キューバを叩いて領土を広げ、あるいはまた他国から金銭で買い入れることで、北米大陸を掌中に入れた後、いよいよ外洋に進出してハワイ、フィリピンまで手に入れたアメリカですが、極東アジアでは最後発の侵略者の立場に立たされます。そうした焦りもあり、アメリカは真の敵を見誤ります。真の敵とは、ソ連、中国の共産党であったにも関わらず、日本が満州で一定の権益を確保することを阻止したいために、蒋介石を通してシナに膨大な援助を行いました。その後の展開は皆さんがご存じの通りです。経済封鎖を断行し、ハルノートを突きつけ、我が国の先制攻撃を誘い出します。非戦を公約に掲げて大統領に当選したルーズベルトにとって、日米開戦は公約違反となりできれば避けたい事態でした。そこで宣戦布告なきだまし討ちという虚構を捏造し、「リメンバー・パールハーバー」という叫び声で見事に全米を戦争翼賛にまとめ上げることに成功しました。
焚書にあった戦前の書物から引用されたところを読むと、当時の日本人はとても客観的に日米関係を分析しています。「日米もし戦はば」というテーマは戦前の未来予測の一つとして結構自由に議論されていたことを本書から学びました。
最後に先頃来日して日本全国に大きな感動を残したブータン国王の国会演説からその一部を引用します。アメリカが血眼になって歴史を改竄し、通念を打ち立てようとどんなに必死になっても、ブータンにはこうした歴史観がしっかり根付いていることを知りました。ブータンにも中国に領土を蚕食されているという現実があります。
「私は若き父とその世代の者が何十年も前から、日本がアジアを近代化に導くのを誇らしく見ていたのを知っています。すなわち日本は当時開発途上地域であったアジアに自信と進むべき道の自覚をもたらし、以降日本のあとについて世界経済の最先端に躍り出た数々の国々に希望を与えてきました。日本は過去にも、そして現代もリーダーであり続けます。」
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