2010年12月04日

中国漁船体当たり事件に関する経緯と新聞各社の反応 古田 博司


 次号の『歴史通』に北朝鮮砲撃事件と共に、以下の原稿が掲載されます。


 坦々塾講師メンバーでもある筑波大学の古田博司先生の原稿です。

 昨日12月3日)、NEWS ZEROにおいてビデオ隠匿は誰の意思であったかということも追記されています。(誰であったかご存じない方は本文(以下)をご覧下さい。

 新聞各社の反応等を時系列で分かりやすく纏めてくださっています。

 この二つの問題は、領土問題を考えるにあたり、非常に重要なことを私たち国民に投げかけています。
 詳しくは次号『歴史通』をご覧下さい。

         坦々塾事務局 大石朋子

 
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中国漁船体当たり事件に関する経緯と新聞各社の反応 
         (以下、太字は各社の取材によるもの)
                      
         2009/12/03 筑波大学 古田博司

7/1 中国、「国防動員法」施行される。(2010/2/26、国防動員法が全国人民代表大会の常設代理機関である常務委員会を通過し、国家主席令第25号として発令)

9/7 尖閣諸島沖で中国漁船が海保巡視船に体当たりする。公務執行妨害容疑で緊急逮捕。逮捕状請求に12時間もかかる。請求の段階で官邸に報告に来たと仙石官房長官発言。官房長官が何らかの政治判断を下した(日経(夕)11/11「証言」)。捜査の当初の段階で官房長官がビデオ見たと発言(11/5記者会見)。法務当局は法的処置として、公判維持のためビデオを非公開とした。
→ビデオ隠匿の発端、その後NEWS ZERO(12/3)において、内閣参与松本健一氏が、ビデオ隠匿は仙石氏の意思であったことを暴露。

9/8 中国船船長を逮捕する。

9/11 午後6時、8時の2度中国側は丹羽宇一郎大使に会談を呼びかけるも、日本側が断る。
(毎日11/8付「対中連携欠如で失態」)


9/12 午前0時、戴秉国国務委員長(副首相級)の丹羽大使呼び出し。

9/13 仙石由人官房長官、記者会見で未明の呼び出しに不快感表明。午後、船長以外14名を中国チャーター機で送還する。

9/19 中国外務省、船長の即時無条件釈放要求、中央テレビ、報復処置として中国閣僚級交流を停止したことを明らかにする。→中国側の攻勢開始

9/22 米紙ニューヨーク・タイムズ(電子版)は、中国が日本向けのレアアース(希土類)輸出の全面差し止めに踏み切ったと報じた。

9/23 中国が「フジタ」社員4名を拘束したことが判明した。

9/23〜9/29(?)仙石官房長官、旧知の中国コンサルタント篠原令を通じ、程永華中国大使と事前の調整をする。(毎日前掲、読売10/23付「政治の現場 外交劣化 その場しのぎ国益危うく」)→官房長官による単独外交の展開

9/23 前原外相は23日、アメリカのクリントン国務長官とニューヨークで初めて会談し、同長官は、尖閣諸島が日米安全保障条約第5条の適用対象になるとの見解を表明。

9/24 那覇地検、処分保留で中国漁船長を釈放する。船長の不起訴処分は検察の判断で然るべきだが、この判断に政治介入があったか否かが問題。当初、法務当局は公判維持のためビデオを非公開としたが、船長釈放後は公判を開けなくなり、非公開の事由は消滅した。(東京11/12付「社説 問われるのは対中外交」)
→以後のビデオ非公開は政治判断

9/29 細野豪志、密命を受け夜訪中、釣魚台国賓館に入る。細野・篠原・須川清司官房専門調査員、戴秉国、中国外務省幹部らと7時間の会談を行う。中国側、「衝突ビデオ非公開」「仲井真弘多沖縄県知事の尖閣諸島視察中止」の2点を要求する。仙石官房長官、要求に応じると伝える。(読売、毎日前掲。日経11/7付「風見鶏」、外務省幹部の言「日中関係が緊迫した時に首相官邸が日本の外交官を信用せず、中国外務省に相談したことに衝撃を受けた」)→民主党はビデオ非公開を決定
→その後NEWS ZERO(12/3)において、内閣参与松本健一氏が、外務省無視は仙石氏の意思であったことを暴露。

9/30 フジタ社員3名解放される。

10/9 フジタ社員残る1名も解放される。→中国側の攻勢終了

10/29 中国、首脳会談拒否。ASEAN関連会議出席のためにハノイを訪問している中国外務省の胡正躍外務次官補、29日夜(日本時間同)、中国の温家宝首相がハノイで菅首相と会談しないことを明らかにする。

11/4 中国漁船体当たり映像、インターネット動画サイト・YouTubeに流出する。
→ビデオ非公開の意味の消失。
→結局、本事件の日本側対応は、ビデオ非公開を主目的として展開された。

この間、マスコミ各社は以下のパターンを繰りかえし流しつづけた。(太字は強調)

@「世論沈静化説」(世論の反日が過激化すると政府のコントロールが効かなくなることを恐れて、様々な沈静化を試みている)

・ 9/11(夕)読売「中国ガス田交渉延期」「世論をなだめ反日感情が過激行動にエスカレートするのを抑える狙いもある」
・10/30 読売「中国が首脳会談拒否」「首脳会談を拒否したのは、中国国内で今週末も反日デモを呼びかける動きがネット上で活発化するなど、会談に必要な環境が整っていないと判断したためとみられる」夕刊でも繰りかえした。
・11/8 東京「双方が国際的に損 関係修復の道険し」「日本側(外務省は)は、……中国では、経済成長の陰で所得格差が広がり、若年層の就職難に社会的な不満がたまっている。『反日』を掲げた学生らのデモの矛先が、いつ胡錦濤政権に向けられるのかわからない」
・11/9 毎日「『失点』防いだ中国」「それに、日中戦で中国人サポーターが暴れたりすれば、大会開催国としてのメンツは丸つぶれとなるところだった」
・11/14 読売「中国、『会談応諾』は30分前」「(APEC首脳会議で)胡氏が笑顔で菅首相と握手を交わした場合、民衆の反日感情が、政権批判へと発展しかねない」
→胡錦濤・温家宝らが、世論の過激化を恐れるという根拠が不明瞭。彼らは天安門事件(一九八九年)で民衆を戦車でミンチにしたケ小平の弟子である。結局これらの憶測は、日本世論の沈静化には役立った。


A「軍部強硬・政府抑制説」(軍の反日姿勢が強硬で温家宝などの政府の要人が抑制に苦慮
している)


・10/2毎日「国文良成 日中は『戦略的互恵関係』に戻れ」「微妙な権力状況下で、党内の強硬派と軍が機に乗じてキャンペーンを展開しているようだ」
・11/5毎日「特集ワイド 『相互理解』がアジア流」「みずほ総研中国室 細川美穂子 反日デモを先導しているナショナリストはほんの一部」
・11/9 東京「中国側にもリスク」「これまで対日関係改善に力を入れてきたのは胡主席と温家宝首相だが、軍などの対日強硬派は反発を強めている」
・10/21 毎日「専門編集委員 金子秀敏 木語 反日デモ 正体見えた」「(共産党の保守派、軍部vs.ケ小平・胡錦濤路線)本当に深刻な党内路線闘争である」
・11/4 毎日「専門編集委員 金子秀敏 木語 危うし温家宝首相」「(軍部vs.温家宝首相)温首相の政治改革を批判する背後の勢力は軍ではないのか」
→中国側に路線対立があるとする根拠が薄弱。冒頭の国防動員法の主語は、中央軍事委員会主席胡錦濤と国務院総理温家宝である(国防動員法第9条)。


B「日本ナショナリズム誘発説」(日本外交へのいらだちが日本の反中やナショナリズムを
誘発し、せっかくの日中経済交流を阻害することになりかねないとする)


・10/27 日経「瀬口清之 『民』主導の交流で融和を」「日本製品の売れ行きへの影響がほとんど見られない事実は詳しく報じられていない。多くの日本人は中国全土が日本人にとって危険な状態になっていると誤解している」
・11/8 日経「日本外交の軸を立て直せ アジア安定に長期戦略を」「本社コラムニスト 岡部直明 危険なのは、無残な日本外交にいらだち、偏狭なナショナリズムを誘発しかねないことだ。ナショナリズムの応酬は、アジアの緊張を高めるばかりである」
→反中デモの主役は、ごく普通の日本市民であった。


C「中央地方派閥表出説」(地方のレアアース派閥が中央に逆らって利権独占を強め中央の統制が効かなくなったなど)

 ・11/7 産経「田村秀男 レアアース『禁輸』は権力闘争」「四川省、広西チワン族自治区、江西省といった他のレアアース産地には、江沢民派などの反対勢力が包鋼の利権独占に抵抗している。そのあおりでレアアースの出荷や生産が止まり、輸出どころではなくなったのだ」
 →レアアースは、国防動員法の規定する戦略物資に当たる(国防動員法第34条)。


D「中国側代弁論」(尖閣をめぐる暗黙のルールを日本が破ったので中国が激怒したなど)
左派雑誌中心の言説


・「船長を逮捕し勾留延長までして調べようとしたのは、暗黙のルールを破って日本の実効支配を強化しようとしたと中国側に映っても不思議はない」(『中央公論』十二月号、東京新聞論説主幹・清水美和)、
・「しかし『事件経過』を見れば、中国の対抗措置は順序を踏んでいることがわかるだろう。……『前例』に従えば、送検ではなく強制退去になるはずだと踏んだとしても無理はない」(『世界』十二月号、共同通信客員論説委員・岡田充)


古田コメント;
 本事件の民主党対応は漁船体当たりビデオの隠匿を目的として、主に仙石官房長官の単独外交を中心に展開された。新聞各社の反応は日本世論の沈静化、中国に対する過剰な思いやり、日本民衆に対する不信感などから醸成された。前者は東アジアの平和の終焉を隠蔽し、後者は平和主義の継続を唱えた。
                                      以上



posted by 坦々塾事務局大石朋子 at 14:16| 東京 ☀| Comment(1) | ゲストエッセイ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
はじめまして。

シナはあらゆる手練手管を使い、日本への侵略を狙っています。報道しないマスコミをたよらず、日本人一人ひとりが気付いて声をあげなくてはなりません。もう時間がないのですから。

Youtubeで見つけた画像をつけます、ご覧下さい。

「中国の国防動員法は日本を狙っている」
http://www.youtube.com/view_play_list?p=B78933F50E6E0529



Posted by ハルカ彼方 at 2010年12月09日 16:51
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