2009年12月16日

天皇は国家公務員か 足立誠之



天皇は国家公務員か

坦々塾会員 足立誠之

 中国の習近平国家副主席の天皇陛下への接見の申し入れが所謂"30日ルール"に反して行なわれることになったことが問題となっています。この"30日ルール"は6年前の陛下の前立腺癌手術後から、陛下のお歳、ご健康、ご公務を考えて厳重にまもられてきたものであり、国の大小、重要度に差をつけないことで政治色を排除し憲法の趣旨に沿うとの事で守られてきた経緯があります。

 そのことについて羽毛田宮内庁長官が異例の記者会見を行い明らかにしたことも問題となっています。

12月13日の民法テレビでは与党議員までもが接見がルールに反して行なわれたことは天皇の政治利用だとして強く批判しました。 翌14日には民主党の小沢幹事長が記者会見で次の様に述べ、憲法上の規定、天皇は内閣の助言と承認のもとに国事行為を行うとされていることから今回の接見には何も問題が無いと延べ、さらに一役人(羽毛田長官)が異論を唱えたそうだが、憲法の規定を知っているのか、異論を唱えるならば辞任してから唱えるべきである、と述べています。 

 巷間議論されていることは、今回の接見が天皇の政治利用ではないかとの問題ですが、小沢氏の記者会見はこの一連のことについて憲法上の根本的な問題を提起する興味深いものです。 

 小沢氏は憲法の規定により天皇は内閣の助言と承認のもとに国事行為を行うとされていることから首相が平野官房長官をして羽毛田長官に異例の接見を指示したのでありそのことは何も問題ないとしているのです。

 一方、羽毛田長官は、"30日ルール"を守ることは国の大小に差をつけずに行うことが皇室外交を政治から離れたそれなりに価値のある外交としての意味をもたらすものであり、それをある国が重要であるからといって例外を作ることはこの原則を壊すことになる、として受け入れ難いとしたのですが、二度にわたる要請でしかも最後は首相の意向であるとのことで、内閣に属する長官として受け入れざるをえなかったとしたものです。

 ここでは内閣と羽毛田氏の関係は語られていますが、問題はそこに存在しているわけではありません。

 問題は、この"30日ルール"が天皇陛下が前立腺癌の手術をおこなった6年前から厳格に守られてきていることです。そこにはそれ以降、歴代内閣、外務省、その他の官庁更に在京大使館を含めた中で周知のことであり又そうしたすべての関係者が尊重してきた原則です。そして陛下ご自身もこの「国の大小、関係の深さには関係なく平等にルールを適用することはよいことである」とご認識されておられた筈でしょう。然し陛下におかれてはこのようなことを口にされることはなされないことが慣行であり、そこは宮内庁長官が陛下のご意向を忖度して自らの言葉で表現してきた筈です。 

 仮に陛下が「それではどの国も平等に扱うという原則に反する」として反対のご意向を述べられたら首相はどうするのでしょうか。

 憲法の規定、"助言""承認"のをもって天皇に接見を指示し実行せしめるのか。そうなると、天皇は内閣の下にある一国家公務員にしかすぎなくなります。羽毛田氏はただ原則があるからだめであるといい、それが内閣の絶対命令であるから天皇に接見してもらえといわれたから仕方が無いというのでは宮内庁長官の役割を果たしていないことにならないか。宮内庁長官の役割の最重要点は、この天皇のご意向を忖度して内閣に伝えそれを説得することにあるのではないでしょうか。

 現行憲法ではこうした場合天皇のご発言については明記されていません。それはむしろ内閣が今回のような政治的な判断で天皇の国事行為を無理強いするようなことを想定していないからでしょう。

 ですから羽毛田長官の悩みも大きかったと思います。ことはかくも重大なのです。小沢氏の発言とは全く正反対の意味で辞任覚悟で発言すべきものでしょう。要は今回の政府と小沢氏の一連の動きは天皇を一国家公務員としかみていないことを示しています。そこに実は最大の問題があるのです。

         文責:足立 誠之
posted by 坦々塾事務局大石朋子 at 06:00| Comment(0) | ゲストエッセイ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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