2009年06月29日

第十四回坦々塾感想尾形美明



      坦々塾会員   尾形美明

 坦々塾では、いつも行き届いたお世話を頂き有り難うございます。
「気軽なメールを送るような文章」というお言葉に甘えて、簡単な感想をお送りします。

 鈴木敏明先生のご講演に就きましては、当日の西尾先生のお話に尽きると思います。

 西尾先生のお話は、全面的に賛同致しました。

 鈴木先生の講演に就いて西尾先生が、「南北戦争と戊辰戦争を比較するのは無理がある」、などと仰ったのはその最たるものです。鈴木氏の話を聞きながら、「それはおかしい。欧州の歴史を考えるべきだ」とか、「淀藩の行動を裏切りの典型だ、などというのは戊辰戦争を理解していない」などと思っていました。アメリカの日系人収容所の話も、西尾先生のご指摘通りだと思います。

 山本周五郎の短編集を読んでいますが、その一編を思い出していました。
戊辰戦争時に、官軍が庄内藩を撃つべく進軍した戦いが舞台となっています。列藩同盟に属するある藩での、官軍を迎え撃った勇敢な武士の娘の話しです。この娘は藩のために命を捧げて密偵活動をします。捕えたこの娘に、官軍の指揮官が話します。

 お前は日本人だね。私も日本人だ。お前はこの地で育って知るまいが、私たちを生んだ日本は、いま大変な危ない瀬戸際にいるんだよ。北からはロシア、東からアメリカ、西からはイギリス、フランスというように、世界の強い国がみんな日本を狙って押しかけてきているんだ。日本は300年という長い間、この島の中に縮まって暮らしてきた。その間に世界の国々はどんどん文明が進んで、弱い国を亡ぼしながら日本へ近づいてきたんだ。・・・いいかい。いま日本の四方には、日本を攻め取って自分の物にしようという恐ろしい敵が一杯押し寄せているんだよ」

 半九郎(指揮官)は噛んで含めるように言った、

 「徳川も酒井もない。日本人という日本人は、武士も百姓も町人も、老人も子供もう一緒になって一塊になって、お国のために戦うときが来ているんだ。全国民が一つの心になって、恐ろしい外国人の手からお国を守るべき時なんだ。
 そのために徳川氏は政治を天子様にお返し申し上げたのだ。もう大名も将軍もなくなっているんだ。
私もお前も,百姓も町人もみんなが天子様お一人をお上に頂いて、お国のために命を投げ出すべき時がきているんだ。それが分からぬ者は国賊だ、天子様に背く不忠者だ、私たちは不忠者を討つために戦っているんだ。
 お前がもし本当の日本人なら、私の言った言葉が分かるはずだ。この地は藩主一族のものではない。
 天子様のものだ、お前は天子様の国の娘なのだ」

この言葉を聞いて、結局、この娘は「この先には罠が仕掛けられています」と官軍に告げます。つまり,裏切るわけです。いかにも山本周五郎らしい分かり易い話しに仕上がっていますが、戦前の少年・少女雑誌にはこの様な物語が書かれていたのですね。他にも、吉川英治や大仏次郎などの大家が執筆してました。
現在のエログロ・ナンセンスとは大違いですね。

 話が逸れましたがそんなことを考えながら、鈴木氏の話を聞いていました。
そういったわけで、西尾先生の話しは安心しながら伺っていた次第です。


石平先生のお話しは大変興味深く拝聴致しました。それは、

・天安門事件の時、中国共産党が対応を“誤って”いたら、共産中国は潰れていた可能性があった。
・それを、ケ小平の“悪知恵”が救った。つまり、「南巡講和」(=市場経済の導入)で共産党幹部だけでなく党に批判的だったエリートたちをも、金儲けと腐敗の道へ引きずり込んでしまった。
・このケ小平の戦略は見事に成功した。石平氏の友人であり、天安門の胡耀邦追悼デモに参加したかってのエリートたちは、完全に利権と金儲けの虜となり、腐敗し切っている。
・中国の急速な経済成長は、こうした党幹部とエリートに巨大な利権をもたらしている。例えば、ある開発案件の許可を取るには何と300のハンコが要る。このハンコを貰うには計画予算の25%が賄賂として必要だ。勿論、その“コスト”は消費者に付回しされる。
・中国の成長は、固定資産投資と輸出に大きく依存している。輸出を支えているのは出稼ぎ農民の低賃金だ。出稼ぎ農民は地方の党幹部に土地を奪われ、約2億人の農民が流民化している。
・こうして、中国における貧富の格差は途方もないものになった。民衆の不満は鬱積している。
・民衆の不満を爆発させないためには、年率8%以上の経済成長が至上命令となっている。
・所得が一部の特権階級に集中しているために、中国ではGDPに占める個人消費の比率が37%しかない。因みに米国は同70%、日本は60%である。
・中国経済は、昨年秋以降の世界的不況の打撃をもろに受けている。年率25%以上も伸びていた輸出は、この3、4月は逆にマイナス25%も落ち込んでいる。所得が偏在している中国では、個人消費を伸ばすことによる内需主導型の経済成長は不可能だ。
・不況の煽りを喰って、大学を卒業しても就職が極端に困難になっている。広州市では、便所掃除の仕事をする人を募集したら、大学卒の若者が400人も殺到した(5月下旬の新聞報道)。
・中国政府は慌てて、57兆円もの景気対策を打ち出した。銀行はなりふり構わず公共事業に貸し出しを急いでいるが、不良資産の増加が避けられないだろう。
・共産党は国民を締め付けてコントロールするが、経済はコントロールできない。つまり、市場経済が共産党支配の「墓掘り人」となるだろう。
・今、不思議なことに毛沢東を懐かしむ風潮がある。人々は「みんなが等しく貧しいことには耐えられるが、自分たちだけが貧しいことには耐えられない」のだ。
・中国には何が起きても不思議ではない。天下大乱と「ファシズム軍国主義化」の危険もあるだろう。

などというものでしたが、
天安門事件当時、対応を誤っていたら共産党政権の崩壊もあり得た、というお話では、佐藤優氏の著書『自壊する帝国』を思い出しました。リトアニアの独立前夜では、駐留するソ連軍の動向が鍵を握っていました。
立て籠もっていた独立運動家たちは、「もし、軍が総攻撃してきたら、逃げ出ししかない」と思っていました。
緊迫する情勢下、佐藤氏がもたらした、「軍は、攻撃の意志なし」の情報で、独立運動の成功が約束されました。
天安門でも、ケ小平の軍投入による弾圧、の決断がなければ恐らく民衆蜂起は成功していたでしょう。

 石平先生の指摘されるように、中国は巨大な矛盾と民衆の不満をマグマのように抱えています。それでも共産独裁体制の転覆は容易でないように思います。それは、中国を旅行された粕谷さんのご報告にあったように、65百万の共産党員とその一族に与えられている巨大な特権・利権です。
さらに、膨大な軍や公安警察と、民衆を監視するハイテク技術の存在です。輸送手段や武器なども昔日の比ではありません。となると、軍か党の分裂がないと政権の転覆は無理なように思うのですが・・・。
石平先生は、インターネットの力を過小評価してはならない。また、軍はともかく党の分裂はあり得る、とのことでした。

 ご講演の結論ですが、中国の将来をアレコレ予想するよりも、日本自身が確りと備えることが肝心だ。それがアジアの平和のためでもあり、アジア各国もそれを望んでいる。また、中国の暴走を止めさせるシグナルにもなる、ということでした。仰る通りだと思った次第です。

            文責:尾形美明
posted by 坦々塾事務局大石朋子 at 08:30| Comment(1) | 坦々塾報告 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
   見方によっては裏切りでも、理解して考えを変えるということがありますよね?

 昔、あの人は、ああだったのにと、しつこく言う人がいますが、反省して考えを正すのは裏切りなのでしょうか?  

 これは、日本人の体質なんでしょうか? そうじゃないと思います。「和」のための知恵ではないか?なんて思いました。  

 許す心を持っているのが日本人だと思いたいです。  

 一度の心からの謝罪で許すのが日本人だと思います。  

 疚しい心でいると、後ろめたさから、相手も許してくれない理解してくれないと、思うのではないのだろうか?  

 忠臣蔵の話も出ましたが、数少ない忠節の話なので言い伝えられたという。逆に、虐待も数少ないから取り上げられたのかもしれない。違うだろうか?  

 前向きに生きるためには、現在の事は、その都度解決していかないと、末代誤解されると言う事を、日本人は学ぶべきだと、歴史を見る度に思います。  

   亀戸天神

Posted by 亀天 at 2009年06月30日 07:51
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