坦々塾会員 小池 広行
IPCC第4次報告書について
IPCC第4次報告書について少し説明を加えます。
第4次報告では温暖化原因を「20世紀半ば以降の世界平均温度の上昇は、その大部分が人間活動による温室効果ガスによってもたらされた可能性が非常に高い。(very likely)」として第3次報告書よりも突っ込んだ表現にしています。
その内容は前回の報告書概要で記載したとおりですが、環境省HPのPPT(PDF)は大変ビジュアルに纏められていてインパクトが大変強い。(是非ご覧下さい)
温暖化により引きおこすであろう大災害(北極の氷の崩壊、シロクマも溺れているようす、大干ばつ、氷河の減退、等々)が次々と想像され、それをマスメディアが大々的に報道してきた、ほとんど毎日のようにそんな内容の記事が大新聞やテレビをにぎわしました。官僚、政治家は気候学の専門家ではないのでIPCC報告を十分理解できないまま政策を決定してきたのです。日本では1997年の京都会議が最初、そして、その達成が困難とみると今年6月、自民党麻生政権はポスト京都(COP15コペンハーゲン報告)を見据え2005年比15%削減を表明、9月民主党鳩山政権が成立するとさらに削減幅を25%に大幅修正し、世界に向けて発信しました。膠着した世界、政権交代契機として日本の存在感アピールと言ったところでしょうか。(現実的な取り組みに対する提言は後述します)
地球温暖化、CO2説に異論を唱える研究者たち
(1)赤祖父俊一先生(アラスカ大学)
赤祖父先生の研究によると数百年前と比べると現在の地球は間違いなく温暖化しているが、問題は「その原因がなにか」を過去150年の地球の温度上昇とCO2の排出量から(陸、海洋、大気)のデータを基に考察している。結論として地球温暖化の原因は「自然変動主因説」としています。
(正しく知る地球温暖化:赤祖父俊一)
○現在は小氷河期の回復期>○1880年頃から直線的に温度上昇→温暖化は自然変動
○1920-1970年の温度変動はCO2と無関係
○北極圏の1950〜2000年の温暖化は消えた
○1900年以降の温暖化は自然変動が主因→CO2の影響は1/6程度
自然現象>人為的要因
(2) 伊藤公紀先生(横浜国大)・渡辺正(東大)
「地球温暖化論のウソとワナ・史上最悪の科学スキャンダル」共著
本書の序章にある科学的知見を以下にまとめてみました。
○ハンセンが1988年に連邦議会証言(CO2が増加に応じ気温もじわじわ上がった)に使った図は、よく見ると1940年頃から70年代にかけ気温は下がっていた。ハンセンは寒冷化には目をつぶった。この寒冷化は太陽活動の変化をもとに説明できる。(ハンセンがCO2排出が地球温暖化の原因であると説いた最初の政治家)
○ 太陽活動の変動周期は11年、約85年、約210年、約1500年が知られている。
○歴史上20世紀より高温だった時期は何度もある。古代ローマ時代、中世温暖期(平安時代)は現在より大分暖かかった。
○潮位計のデータを見る限りツバルは沈んでいない。
○地上で測った気温は都市化の影響を受けるため、「見かけ上の温暖化」に注意しなければならない。
○気象観測衛星NOAAのデータによると南半球と南極圏は寒冷化。地球全体は緩やかな昇温傾向から横ばいに転じつつある。
○都市化が無視できる観測点3000箇所による世界地表平均気温の1970年から2010年までの昇温は0.2℃(都市を含めると0.7℃)
○2005〜06年に氷原が縮小した北極圏で、氷原面積の拡大傾向が認められた。
○インド洋モルディブ諸島は過去40年で20cm海面が下がった。海面上昇や下降の主因をプレート運動など地殻変動とみる説が強まった。
○過去100年、ハリケーンや竜巻、干ばつの頻度はほとんど変わっていない(米国の統計調査)。
○過去20年、生物種の絶滅はほとんどない。北極圏のシロクマは個体数が20〜30%増えている。
疑問の多い温暖化対策の事例;
* 京都議定書は地球温暖化を抑える力はほとんどない。
* 省エネは経済活動の縮小を意味するため、温暖化を抑えるほどのCO2排出削減は国民生活の破壊につながる。
* 省エネ製品が大量に売れるとCO2の排出は増す。
* 不安定な新エネだけでは日本のエネルギー需要はまかなえない。
* 石炭はあと数百年あるので、石炭利用技術の開発を進める方が賢い。
* 排出権取引は資金の場所を動かすだけのマネーゲーム
(3) 石井吉徳先生(東京大学)
石油ピークを啓蒙し脱浪費社会をめざすもったいない学会
(もったいない学会会長)、
○浪費、無駄しない、日本は世界6位の「海岸線の長さ大国」、大陸ではない 山岳75%
○ 西欧文明の終焉、脱欧入亜を目指す、アメリカ主導のグローバリズムは自壊する
○ 1970年頃を目指そう、当時エネルギー消費は半分、食料自給率は60%、現在より「心は豊か」であった
○ 少子化、人口減をチャンスとする、民族の生存には人口が少ないほど有利、年長者も働く
○ 流体燃料危機である、車社会を見直し、鉄路、公共運輸の充実、自転車を利用する
○ 集中から地域分散、低密度の自然エネルギーは分散利用、評価はEPR(エネルギー収支比)
○ 日本列島を有効に使う、石油依存農業の見直し、地産地消の自然農業、分散社会への技術
○ 循環社会は3R;Reduce(減量)Reuse(再利用)Recycle(リサイクル)の順、先ず減量
○ 効率優先社会の見直し、集中から地域分散、自然と共存をはかる、これは60倍の雇用を生む
○ GDPの無限成長より「心豊かに」、「もったいない」、「ほどほどに」、「人のつながり」を重んじる社会。
http://www.mottainaisociety.org/outline/message.html
(4) 武田邦彦先生(中部大学)
「環境問題のウソ」
(他多数の先生方がいらっしゃいます。IPCC否定的な科学者の間でもすべてベクトルが一致しているとは言えませが、各学会等で健全なバトルが行われてます)
さて、IPCC報告に沿って低炭素社会構築を目指す日本、(鳩山さんはCO2削減で世界のリーダーとなりえると本当に思っているのでしょうか?宇宙人だから本気かも?でも、東大工学部卒なんですよね(笑))そして科学よりも政治が先行しCO2削減に浪費することへの警鐘をならす科学者たち。
次回、日本の取るべき方策はについて考えてみます。
<つづく>
文責:小池 広行