2009年07月04日

『人民元がドルを駆逐する』西沢裕彦

『人民元がドルを駆逐する』 (KKベストセラーズ)    
   
      宮崎正弘著

      
   坦々塾会員 西沢裕彦

 宮崎正弘氏著『人民元がドルを駆逐する』(KKベストセラーズ)を手に取りました。「半世紀後、世界の基軸通貨はゴールドにリンクした華元(人民元の新バージョン)となり世界の支配的通貨になっているシナリオを全否定できない」というのが本書のモチーフでそれを導く基となる政治経済金融情報と数値データが海外を含めた新聞、雑誌、電波メディアから収集され整理圧縮されコンサイスに纏めあげられています。鮮度の高い最新情報が満載でなるべく早く手にとって欲しい一書です。 

 貿易、金融に携わる者ならこの書に記されている内容を消化してビジネス・トークに織り込みたいものです。資産運用のヒントも掴めます。国際金融に関心のある大学生、高校生が手に取るには格好の書でしょう。金融を通して国際政治、そしてその中の日本のプレゼンスも理解でき新聞、テレビの伝える中国が巨象でなく虚像であることも分かるでしょう。資源覇権を貪欲に進めている中国が「通貨覇権」にも野心を剥き出しにしているさまが浮き彫りにされそれを進める狡猾なまでのしたたかさが描かれています。中国人はもともと貪欲狡猾したたかだと思うのですが国際社会に向かって常に勇ましい発言をし目立つ実績を挙げなければ生き残れない中国支配層の苛烈な内部競争もあるのでしょう。国際会議での中国代表のアグレッシブさ存在感と日本代表を比べるとそのパワーやプレゼンスの見劣りは歴然です。

 チベット人思想家ラビ・バトラ氏の著書『2009年断末魔の資本主義』を取り上げた箇所に「問題解決のキーは日本人の頭脳再建にある」と日本社会のメンタル・タフネス不足を嘆く条があります。たしかに「日本人の精神の萎縮、その精神の老衰こそは高齢化社会の構造的な衰弱より、もっと深刻な事態」と本書が指摘している通りです。

 中見出しのひとつに「(中国の)V字型回復のニュースに騙されてはいけない」とあります。中国政府の積極財政政策で上向いた同国の経済指標につられて日本の株式市場が一万円台を付けました。本書が指摘するように中国経済の好調さは財政出動がもたらした表層的で一時の現象で中国の輸出は依然回復する兆しはないのです。第8章「そこで日本経済はどうなる?」は示唆に富んでいます。本書に引用されているエマニエル・ドット著『帝国以後』の一節「世界が米国なしで生きられることを発見しつつあるそのときに、米国は世界なしでは生きられないことに気づいた」はじつに辛辣なアフォリズムです。西部邁氏著『サンチョ・キホーテの旅』から引いた「(米国は)ジェラルミン色の巨大な円盤となって、宇宙の彼方に飛び去っていくのではないか」はなかなか秀逸な一節です。米国六分裂のシナリオ、丹羽春喜理論の核心、今年十月建国六十周年を迎える中国の波乱予想など読み所満載でした。(了)

      文責:西沢裕彦
posted by 坦々塾事務局大石朋子 at 08:06| Comment(2) | 読書感想文 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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