2009年05月20日

小林秀雄著「本居宣長」を読んで

  

  浅野正美           

 坦々塾会員・坦々塾事務局映写担当

<小林秀男著「本居宣長」を読んで>

 標題の書籍はもちろん新刊ではなく、昭和52年に刊行されたあの名著である。実はその函入りの立派な本を「補記」二冊とともに買いながら、今まで読了することができなかった。かつて三度ほど挑戦しては、その難解さに挫折して、もう一生読めないのではないかとあきらめかけていた。ただ、いつかはきっととの思いはあり、居間にある書棚の一番目立つ位置に置いて、つねに意識の片隅から外れないようにしてきた。

 今回50歳を前に最後の挑戦のつもりでこの高峰に挑み、ついに読了を果たした。毎日2時間で12日間、これが本居宣長を読むのに費やした時間の総量である。一介の会社員に過ぎない私に、この本の書評めいたことは何一つ語ることはできないが、神話に連なる我が国の御皇室を考えるときに、どうしても外すことのできない本であることを改めて知った。宣長は、古事記を物語ではなく歴史として読んだ。この「古き事を記す文」を我が国の史実として読んだ。

 現代に生きる我々は、不可知論という便利な言葉を用いて、安易にそういった安全地帯に逃げ込んでしまうが、宣長は全身全霊を持って、我が国最古の書物に書かれていることを信じた。その信念に一点の揺るぎもない。

 この本を読まれた方はすでにご存じのように、著者は宣長の書いた書物から大量の文章を引用している。重要と思われる文章は、何度も引用する。現代語訳をつけるという親切はない。文庫版の,解説に替えて収録されている江藤淳との対談で著者は語る。「色々な引用文も読んでもらえますかね。」私がかつて何度も躓いたのもこの点で、江戸中期の日本語にまったくお手上げであった。

 本書ではまず、宣長の思想を形成する上で重要な役割や影響を与えた江戸時代の思想家のことが相当な分量をもって語られる。ここに登場するのは、中江藤樹、契沖、徂来、堀景山、加茂真淵、といったそうそうたる名前である。それが終わるといよいよ、宣長の仕事へと入ってゆく。宣長は言葉の意味をとことん突きつめた。古人が使っていた言葉が宣長の時代にはまったく違う意味になっていることもある。そういった言葉の、それが書かれた時代の本来の意味を探り、書かれていることの真意を突き止める。
例えば「大和魂」である。吉田松陰の辞世、「身はたとひ武蔵の野辺に朽ちぬとも 留め置かまし大和魂」のように、我々はこの言葉から、雄々しい、潔い、自己犠牲といった男性原理(刀・益荒男『ますらお』振り)を連想仕勝ちであるが、この言葉の初出と思われる源氏物語ではまったく違い、学んで得た知識を働かす智慧、の意味で使われている。

 長い間私の中では、神話の世界と歴史とをどのように整理していいのかわからず困っていたことがあったが、そこに明確な答えを提示してくれたのが、西尾先生の「江戸のダイナミズム」であった。そして今回、「本居宣長」を読み進めつつ、しきりに考えたことは、もう一度「江戸のダイナミズム」を読まなくてはならないということであった。
たった一度読んだだけでは、あの浩瀚な内容と深さの万分の一にもたどり着けない。帯には平成の本居宣長とある。今回、両書を読み終えてようやくその意味が理解できた。

「本居宣長 補記T」の最初の方に大変印象的な文章があったのでこれを引用して終わりたい。
これを我が学びの教えにしたいと思う。

「うい山踏み」から 
(初めての山登りの意、転じて学問を始めるに当たっての心構え)

 学びやうの次第も、一トわたりの理によりて、云々してよろしと、さして教へんは、やすきことなれども、そのさして教へたるごとくにして、果たしてよきものならんや、又思ひの外にさてはあしき物ならんや、実にはかりがたきことなれば、これもしひてはさだめがたきわざにて、実にたゞ其人の心まかせにしてよき也。詮ずるところ学問は、たゞ年月長く倦まずおこたらずして、はげみつとむるぞ肝要にて、学びようは、いかやうにてもよかるべく、さのみかゝはるまじきことなり。いかほど学びかたよくても、怠りてつとめざれば、功はなし。又人々の才と不才とによりて、其功いたく異なれども、才不才は、生まれ尽きたることなれば、力に及びがたし。されど大抵は、不才なる人といえども、おこたらずつとめだにすれば、それだけの功は有ル物也。また晩学の人も、つとめはげめば、おもいの外功をなすことあり、又暇のなき人も、思いの外、いとま多き人よりも、功なすもの也。されば才のともしきや、学ぶことの晩きや、暇のなきやによりて、思ひくづをれて、止ることなかれ。とてもかくても、つとめだにすれば、出来るものと心得べし。すべて思ひくづをるゝは、学問に大にきらふ事ぞかし。 (後略)


文責浅野正美



posted by 坦々塾事務局大石朋子 at 22:29| Comment(9) | ゲストエッセイ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年05月18日

日本を語る大講演会

<日本を語る大講演会>

 昨日17日、星陵会館にて「日本を語る大講演会」が行われました。

 新しい歴史教科書の市販本には
三笠宮寛仁親王殿下の特別寄稿をいただいてございますので、知り合いの方にも是非お薦めください。

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会場は満員で、講師の先生方の中味の濃いお話に会場は熱気に包まれていました。


開会挨拶  福地惇副会長

 <講演>
 
1  加地伸行先生  
        「儒教と日本人の精神と」
2  加瀬英明先生  
        「愛国心について」
3  田久保忠衛先生 
        「日米関係の歴史」
4  山正之先生  
        「欧米のアジア植民地支配」
5  西尾幹二先生  
        「米占領支配が消し去った歴史」
6  井尻千男先生  
        「『ナショナルエコノミー』が築いた日本の力」
7  藤岡信勝先生  
        「日本の国家的自立と歴史教科書」

閉会挨拶  杉原誠四郎副会長

 感想文を書き始めましたが、
「歴史教科書市販本の15の視座」をご覧いただいたほうが良いかな・・と思いましたので、亀天感想文はボツ(笑)にしました。

ただ、西尾先生のお話の中でのNHK問題と与党自民党の問題は、お話の途中の、米からの「日本は罪の意識が無い」と指摘された話のあたりから、私ですら、そうではないかと思わされました。
 NHK問題は根が深いと、改めて思いました。


        亀戸天神(坦々塾事務局 大石 朋子)
posted by 坦々塾事務局大石朋子 at 12:27| Comment(7) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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